新しいハウス・ファブリック:ザ・ロンズデール・チェック
ヘンリープールのアーカイブは常に、こんにちショールームに展示されているデザイン、型紙、衣装などの創作インスピレーションの源となってきました。
およそ220年に及ぶ仕立ての歴史に培われ、一点の衣装の価値を単に背景にあるストーリーだけではなく、それを着ていた人ひとりの生き方からも深く理解することが出来るようになりました。この知識によって、クラシック・テーラリングを現代の紳士向けに丁寧にアレンジすることが可能になったのです。トラディショナルなデザインの細部、例えば可動するカフスボタン(本切羽)や外側につけるチケットポケットなどは、機能的というより美的なこだわりとして残っていますが、受け継いできた伝統へのエレガントなオマージュにもなっているのです。
ヘンリープール・スペシャルといわれるものは、あくまでエクスクルーシブな生地を使い、サヴィル・ロウ15番地の卓越した職人によって手縫いされているという特別なプライドともいえるでしょう。これらの生地は慎重に選び抜かれ、審議を重ねて初めて特別なエクスクルーシブ・コレクションに加えられます。とはいえ、時にはその生地そのものがもとから特注され選ばれた生地であることもあります。今回ご紹介する最新のコレクションがまさに第5代ロンズデール伯爵の生地なのです。
ヒュー・セシル・ラウザー(第5代ロンズデール伯爵1857-1944)は真のスポーツ愛好家として知られ、親しみを込めて“ローディ(伯爵さん)”と呼ばれていました。人生のほとんど全てを娯楽とスポーツに捧げ、ロンドンのナショナル・スポーツ・クラブの創設者であり初代会長、また1909年にはボクシング界の不朽のシンボルとなったロンズデールベルトを作り贈呈しています。伯爵の名を冠した有名スポーツウェアブランド「ロンズデール」は今も健在です。彼はまた熟練したハンターでもあり、5つのハンティング大会のマスターでした。その一つが有名なクオーンハント(マスターの期間は1893年から1898年)で、シャープなシューティング技術と非の打ちどころのないスタイルで名を馳せました。彼は特注のロンズデール・ツイードという生地でスーツを作り、領地のスタッフにもお揃いで別色のツイード生地でスーツを作らせていました。ヘンリープールの台帳にそのオーダーの詳細が非常に細かく記録されています。
第5代伯爵とハワード・カンディとの間の、1912年から始まるこの大胆なシェパードチェックツイードの生地についての書簡を見つけた時、これこそが次のヘンリープール・ハウススペシャルとして、おのずから名乗りをあげてくれたのだと直感しました。伯爵がこのロンズデール・ツイードを特注して作らせていたミル、スタンドイーヴン社が今も健在であることから、113年の時を経て、また同じミルでこの明るくエレガントなデザインを忠実に再現することが最適であると感じたのです。もともとは重さ16ozの厚い生地でしたが、モダンテイストな着心地を考えて11ozの軽さにしました。秋冬向けに温かさとラグジュアリーな手触りを保つため、素材にカシミアを加えています。これにより、柔らかさと温かさだけでなく毛羽立ちの美しい仕上がりとなりました。
ヘンリープール・ロンズデール・チェックは9月より受注開始いたします。
ご用命はinfo@henrypoole-jp.comまでお願いいたします。